

この記事を書いた人
後藤 佑輔
IGS代表大和証券・アクセンチュアを経て、2023年にIGSを設立。非エンジニアながらClaude Codeで自社業務の多くを自動化し、AI事業開発を行っている。
Threads @yuigs_ai代表の後藤です。
2026年6月、少し信じられないことが起きました。Anthropic社が提供する最上位AIモデル「Fable 5」と「Mythos 5」が、世界中のユーザーに対して使えなくなったのです。
原因はサイバー攻撃でも、システム障害でもありません。
米国政府がこの2つのモデルに輸出規制を適用したからです。
Anthropic社の公式発表によると、経緯は以下の通りです。
- 6月9日:Fable 5・Mythos 5をリリース
- 6月12日:米国政府が輸出規制を適用。国籍をリアルタイムで確認する手段がなかったため、全ユーザーへのアクセスを停止
- 6月30日:規制解除
- 7月1日:Fable 5が全世界で復旧
つまり、世界最先端のAIが、約3週間丸ごと使えなくなっていたことになります。普段の仕事で「AIが前提で動いている方」ほど、この話にはヒヤッとするのではないでしょうか。
弊社のメインAIが、まさにこの停止の直撃を受けた
もちろん、この話は他人事ではありませんでした。
最上位モデルを利用可能な現在(7月14日時点)、弊社のメインAIはこのFable 5 です。普段の判断や設計は、このモデルに任せています。
余談ですが、弊社ではトークン使用量最適化のため、下記の体制としています。
- 総指揮=Fable 5(自身は手を動かさず、サブAIに指示を行い、品質担保のみを行う)
- 実行役=Opus 4.8・Sonnet 5(トークン消費が少ないモデルにて実行)
で、当然ですが、6月中旬から7月1日にかけて、弊社も Fable 5 の使用はゼロ。輸出規制による停止の直撃を、弊社もそのまま受けていたわけです。
「頼りにしていたAIが3週間近く動かない」。これが、実際に弊社で起きたことでした。
それでも、仕事は止まらなかった
ここが今日一番伝えたいところです。

弊社では、メインのAIには
- 品質管理
- 設計
- 最終判断
だけを任せています。実際に手を動かす調査・執筆・開発などの実務は、複数の下位モデルのAIたちに分担させる運用にしていました。
なので、メインのAIが使えない期間があっても、メインAIをスライド(Fable 5→Opus 4.8)するだけで、実務を担当しているAIたち(Sonnet 5)は普段通り動いていました。1つのAIが止まっても、会社全体が止まらない構造になっていたということです。
この「AI社員を複数人に分けて役割を持たせる」考え方は、以前の記事AIエージェントの作り方|1人社長がClaude Codeで「AI社員」を作った方法で詳しく書きました。今回のような事態が起きて初めて、この分散構造のありがたみを実感しました。
「エース社員が急に3週間休む」は、人もAIも同じ
これは経営の話に置き換えるとわかりやすいと思います。
もし御社で、一番仕事ができる社員が「来月から3週間、事情があって出社できません」となったら、どうなるでしょうか。その社員に業務が集中していればいるほど、会社への打撃は大きくなります。逆に、日頃から仕事を分担し、複数人が同じ業務を代替できる体制にしていれば、1人が抜けても会社は回ります。
AIも、まったく同じです。
「一番優秀なAIに全部任せる」のは、便利な一方で、その1社・1モデルへの依存度を上げる選択でもある
弊社では、以前AIに任せられる仕事・任せない方がいい仕事という記事で、AIに何を任せるかの線引きについて書きました。今回の一件は、「どのAIに任せるか」も同じくらい大事だと気づかされた出来事でした。
AI活用や業務改善について、お気軽にご相談ください
無料で相談する明日からできる備え
今回の経験から、弊社が実際に見直したこと、あるいはこれから見直そうとしていることを整理します。
- 重要な業務ほど、1つのAI・1つのサービスに一本化しない
- メインで使うAIと、実務を代替できるAIを分けて運用する
- 「もし今使っているAIが1ヶ月使えなくなったら、業務は止まるか」を一度シミュレーションする
大掛かりな仕組みを最初から作る必要はありません。まずは「今、何にどれだけ依存しているか」を洗い出すところから始めるだけでも、備えになります。
FAQ
Q. Claude以外のAIサービスでも同じようなことは起きますか?
A. 今回は米国の輸出規制という特殊な理由でしたが、サービス障害・規約変更・値上げなど、1社に依存するリスクは他のAIサービスでも起こりえます。
Q. 中小企業や1人社長は、どこまで分散すればいいですか?
A. 弊社の場合はメインAIと実務用AIを分ける形にしましたが、正解は会社によって異なります。まずは今どのAIにどの業務を依存させているかを洗い出すことが最初の一歩です。
Q. AIを複数使うと、コストや手間が増えませんか?
A. 増える面はあります。ただ、1つのAIが止まった時に業務全体が止まるリスクと比べて、どちらを取るかという判断になります。
Q. 今回のAnthropic社の停止は、また起きる可能性がありますか?
A. 弊社では予測できませんが、少なくとも「起きないと思い込む」より「起きても仕事が止まらない備えをしておく」方が現実的だと考えています。
1社のAIに依存しない運用の仕方でお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。弊社の実例をもとに、一緒に整理します。


