
代表の後藤です。
一時期、「あなたは○○のプロです」みたいな手法(ロールプロンプティング)よく見たじゃないですか?あれ、ほとんど効果がないとの論文を最近目にしました。
まあそうだよな~と思いつつ、プロンプトの適切な出し方って意外と見ないなと思いまして、今回記事にしようと思い立ちました。
私はある程度ロジックがないと情報を信用しないので、私自身効果があると実感した方法だけをお伝えします。
AIへの指示は、部下への指示と同じ
AIへの指示出しを「プロンプトエンジニアリング」と呼びます。
一見、難解な言葉に見えますが、実態は「部下への指示出し」とほとんど同じです。
言うまでもないと思いますが、例えば部下に「いい感じの資料作って」と言ったら、大体のアウトプットは低いですよね。目的も背景もわからない指示で、良いアウトプットが出てくるはずがない。まあ当然です。
AIもこれと全く同じです。経営者やマネジメント層は毎日この「指示出し」をやっているわけで、実はAIとの相性は非常にいいんです。
今日からできる「指示の型」
ここからは、研究で効果がある程度実証されている方法を4つ紹介します。どれも毎回の指示に固定で使えるものなので、型として覚えてしまってOKです。
1. 背景と目的を伝える
AIは「あなたの会社のこと」も、「業界のこと」も、「お客さんのこと」も知りません。だから「何をしたいか」だけでなく「なぜそれをしたいか」「どういう状況か」を伝えるだけで、回答の質が劇的に変わります。
MORE事例:「社員を増やしたいから、中途採用の求人票を書いて」
GOOD事例:「弊社は従業員30人の製造業で、採用が課題です。特にベテラン技術者が定年を迎える中、30〜40代の経験者を採用したい。中途向けの求人票を作ってほしい」
これだけで、AIは「製造業」「技術者採用」「経験者向け」という文脈を理解した上で回答してくれます。
2. 具体例を見せる
これが研究で最も効果が高いと言われている手法(すみません、大方実証されているようですが、断言は避けさせていただきます)です。正答率0%だったタスクが、具体例を数個見せただけで90%まで上がった事例もあるほどです。
やり方はシンプルで、「過去にうまくいったも事例」をAIに見せるだけです。
例:「過去に出した求人票はこちら。このトーンと構成で、新しいポジション用の求人票を作ってください」
AIは具体例から「どんな雰囲気で、どんな粒度で、何を含めるべきか」を一発で理解します。言葉で細かく説明するより、圧倒的に早くて正確です。
3. 複雑なことは分解して聞く
一度に全部やらせようとすると、精度が落ちます。これは人間でも同じですよね。
例えば事業計画書を作りたい場合、「事業計画書を作って」と丸投げするのではなく、まず「うちの業界の市場トレンドを整理して」→ 次に「うちの強みと課題を整理して」→ それを踏まえて「3年間の成長戦略を書いて」→ 最後に「全体をまとめて事業計画書の形にして」。
こう分けて聞くだけで、各段階の精度が上がり、最終的なアウトプットの質がまるで違ってきます。
4. AIに自分の回答を見直させる
最後は、AIに自分の出力をチェックさせる方法です。
例:求人票を作ってもらった後に、「この求人票を応募者目線で読んで、改善点を3つ挙げて」と聞く。
AIは自分が書いたものを客観的に見直してくれるので、1回のやり取りで完成度がグッと上がります。
追加)足りない情報を質問させる
4つの型に加えて、仕上げとして「この内容で足りない情報があれば質問して」と一言添えると、自分では気づかない観点をAIが補ってくれます。
私はアクセンチュア時代に「要件定義」をやってきましたが、やっていることはまさにそれと同じです。全体像を伝える→整理させる→抜け漏れを潰す。この流れが身についている方は、AIとの相性は抜群だと思います(このあたりは別記事でも書いています)。
おすすめの設定~上記の固定指示を事前設定しておく~
「背景を毎回伝えるのは面倒」だと思いますよね?私は面倒です。なので、これらの設定をAIに記憶させておきましょう。
主要なAIツールには、あらかじめ固定の指示を裏側に設定しておける機能があります。
ChatGPTであれば「カスタム指示」、Geminiであれば「Gems」、Claudeであれば「プロジェクト」のカスタム指示。呼び方はバラバラですが、やっていることは同じです。
例えばGeminiの場合、やり方はこれだけです。
- Geminiの画面左上にある「メニュー」をクリックし、「Gem」を選択
- 「+Gemを作成」をクリック
- 名前をつけて(例:「業務アシスタント」)、カスタム指示欄に背景情報を入力
- 「保存」を押して完了
カスタム指示には、例えばこんな内容を入れておく。
回答の際は下記の情報を参照してください。
#自社情報
- 業種:製造業(自動車部品の加工)
- 従業員数:30名
- 主な取引先:自動車部品メーカー
- 現在の課題:技術者の採用、業務のDX推進
#出力指示
- 情報が足りない場合は、回答する前に質問してください
- リスクや注意点があれば必ず指摘してください
- 専門用語は使わず、わかりやすい言葉で説明してください
- 回答は経営判断に使えるレベルの具体性でお願いします
これを一度設定しておけば、毎回の指示では「求人票を作って」「競合調査して」とだけ伝えれば、AIが背景を踏まえた上で回答してくれます。毎回ゼロから説明する必要がなくなるわけです。無料プランでも使えるので、ぜひ試してみてください。
「あなたはプロの○○です」はもう古い
さて、少し話を変えます。
AIへの指示で一番有名なテクニックといえば、「あなたはプロの○○です」と役割を与えるロールプロンプティングでしたよね。ネットの記事でもYouTubeでも、かなりの頻度で紹介されています。
しかし、最新の文献によると、このロールプロンプティングは回答の精度にはほぼ効果がないことがわかってきました。
プロンプトエンジニアリング研究の第一人者であるSander Schulhoff氏は、OpenAI・Googleなどと共同で大量の論文を分析。その結果、役割を与えたプロンプトと与えなかったものでは、回答の精度にはほとんど差がなかったと報告しています。
文章のトーンやスタイルを変えるには使えますが、クリティカルに「回答の質が上がる」訳ではなさそうです。
大事なのは「役割」ではなく、さっきお伝えした「背景情報」と「具体例」。こちらの方が圧倒的に効きます。
自社でAI運用を始めるために
最後に、「自社でAI運用を始めたい」と考えている経営者へ。
これは私の考えですが、「自社の優秀な社員」をAI担当にするのが最も本質的です。能力もあるし、なにより事業理解が深い。AIを上手く使うには「背景情報」が重要だという話をしましたが、それを一番深く持っているのは、事業のことをよく知っている社員です。
ただ、既存業務がある中でその決断は容易ではないはずです。
なのでフェーズ1は、いきなり何かを作らせるのではなく、「自社のAI運用方針をAIと一緒に作る」ところから始めるのがおすすめです。
事業を一番知っている人間がAIと対話しながら戦略を考えるから、的外れにならない。しかも、方針を作る過程で「AIってこう使えるのか」という実感と当事者意識が同時に生まれます。
この「最初のAIとの対話」で、今回お伝えした指示の型がそのまま活きます。自社の背景を伝え、過去の事例を見せ、段階的に整理していく。それだけで、かなり実用的なAI運用方針ができるはずです。
「何から始めればいいかわからない」という方は、まずここから試してみてください。難しければご相談ください。
最後に
AIへの指示は、特別なスキルではありません。日常の「部下への指示出し」がそのまま活きます。
「背景を伝える」「具体例を見せる」「分解して聞く」「見直させる」。この4つを意識するだけで、AIの回答はかなり変わります。
どのAIツールを使えばいいかわからない方は、ChatGPT・Gemini・Claudeの比較記事も参考にしてください。また、経営者の方にはぜひ経営者こそAIを触るべき理由も読んでいただけると幸いです。
「うちの業務でAIを活用したいけど、どう始めればいい?」そんな疑問があれば、お気軽にご相談ください。雑談レベルで構いません。
お問い合わせはこちら:https://www.i-gs.co.jp/contact
よくある質問
Q. AIへの指示で一番効果がある方法は?
A. 具体例を見せること(Few-shot)です。研究でも最も効果が高いとされています。背景情報を伝えることも同様に重要です。
Q. 「あなたはプロの○○です」は使わなくていい?
A. 回答の精度向上にはほぼ効果がないことが研究で判明しています。文章のトーン調整には使えますが、優先度は低いです。
Q. プロンプトエンジニアリングを学ぶ必要がある?
A. 大げさに学ぶ必要はありません。背景を伝える・具体例を見せる・分解して聞く・見直させる。この4つで十分です。
Q. 自社でAI運用を始めるには何から?
A. 事業をよく知る社員が「自社のAI運用方針をAIと一緒に作る」ところからがおすすめです。
