

この記事の著者
後藤 佑輔
IGS代表大和証券、
代表の後藤です。
※Web集客・広告・SNS・AI導入などをまるっと月10万円から引き受けます → 後藤、貸します。
「AI導入、うちは何から始めればいいのか」。この相談を受けたとき、多くの会社がすでに調べ終えているのは、どのAIを契約するか、という話です。ChatGPTなのか、Geminiなのか、Claudeなのか。月額はいくらか、どれが賢いか。
ただ、ツールを決めるのは3番目でいい、というのが弊社の考え方です。
弊社は非エンジニアの会社です。それでも自社サイトを6つ(サイト採点くん、SNSはじめるくん、家じまいくん、無料AIツール集、Free Marketing Tools、Free Tegami Tools)、企画から公開、運用まで自分でやっています。会社のブログは88本、Claude Codeの使い方をまとめたTipsは65本を公開しています。この記事は、その過程で分かった「決める順番」をそのまま書いたものです。
AI導入で最初に決めること
ツールの比較から入ると、たいてい数か月が過ぎます。理由は単純で、比べる基準が手元にないからです。どれが自社に合うかは、何をやらせるかが決まって初めて判断できます。
AI導入で最初に決めるのは、どのツールを使うかではなく、どの作業を自分の手から離すかです。
決めることは3つあります。
① 手放す作業を1つ選ぶ
「経理を効率化したい」は、まだ作業になっていません。「毎月5日に、届いた請求書の内容をシートに書き写している作業」まで下ろします。誰が、いつ、何分かけているか。ここが言えるところまで具体的にします。作業を1つに絞るのは、増やすのがいつでもできるからです。
② 手放せたと判断する条件を決める
「便利になった」では判断できません。「この作業を自分がやらなくなった」「かかっていた時間が半分になった」のように、あとから○×を付けられる形にしておきます。この条件がないと、続けるか止めるかを決められません。
③ 誰が最終判断をするか決める
AIが出したものをそのまま使うのか、誰かが見てから使うのか。ここを決めないまま始めると、出てきたものを誰も確認しないまま置かれ、そのうち誰も開かなくなります。
弊社がいま毎日または毎週AIに回しているのは、毎朝の定型処理、KPIの週次集計、記事の内部リンク点検の3つです。共通しているのは、毎回発生することと、手順が決まっていることの2点だけです。特別な作業は入っていません。
明日できることを1つ挙げるなら、直近1週間の自分の予定表を開いて、同じ手順を繰り返している作業に印を付けることです。印が付いた作業が、そのまま導入候補になります。
任せる仕事の選び方
印を付けた作業のうち、最初に回すものは次の3つの条件で選びます。
① 毎回発生する
月1回でも構いません。1回きりの作業は、任せる準備をするほうに時間がかかります。回数が多いほど、準備した手順が効いてきます。
② 手順を人に説明できる
入ったばかりの社員に口頭で説明できるなら、AIにも説明できます。説明できない作業は、AIに向いていないのではなく、社内でまだ手順が決まっていない作業です。ここは人が先に決める仕事になります。
③ 間違えてもすぐ戻せる
下書きを作る、候補を並べる、点検して報告する。このあたりまでは、間違いがあっても取り返しがつきます。最初に回すのはこの範囲からにします。
そして、任せない側も同時に決めます。弊社では、公開する、社外へ送る、お金が動く、消す。この4つは人の承認を必ず通す運用にしています。AIは下書きまで作りますが、最後のボタンは自分で押します。
たとえば弊社は、記事の内部リンクが切れていないかの点検をAIに任せています。おかしい箇所は報告として上がってきますが、直したものを公開するかどうかは、自分が見てから決めています。任せているのは点検であって、公開ではない、という切り分けです。
任せる範囲の線引きは、AI社員に任せている9つの仕事でも具体的に書いています。
明日できることは、候補を3つ書き出して、上の3条件に○×を付けることです。○が3つそろったものだけを、最初の1つにします。2つしかそろわない作業は、後回しで構いません。
ツール先行で失敗する理由
ツールから入ると、話が「使えるか、使えないか」になります。試してみて、便利そうだと感じて、契約する。ここまでは進みます。止まるのはその次です。誰の、どの作業が、いつからなくなるのかを決めていないので、翌月には元のやり方に戻っています。
残るのは契約だけです。
もう1つ、ツールを入れただけでは埋まらないものがあります。動いているかを確認する係です。
弊社で実際にあったことを2つ書きます。
1つは自社サイトのsitemapです。sitemapは、検索エンジンに「このサイトにはこういうページがあります」と伝える一覧のことです。新しく作ったページが、この一覧に登録されないままになっていました。点検して見つかったので、その場で直しました。仕組みを作った時点では正しく動いていて、後から増えたページで穴が空いた形です。
もう1つはLPです。1枚の画像で作ったLPが、開いたときに画面へ収まりませんでした。作ってから実際の画面で見て気づいたので、作り直しました。
仕組みは、作った日ではなく、作ったあとに壊れます。
どちらもツールの性能の話ではありません。作ったものが今も正しく動いているかを、誰がいつ確認するのか。それを決めていなかった、という話です。契約を増やしても、この係は埋まりません。
なので、決める順番はこうなります。① 手放す作業を決める ② 手順を書く ③ ツールを選ぶ。ツールが3番目なのは、後から替えられるからです。作業の選定を間違えると全部やり直しになりますが、ツールは乗り換えられます。
明日できることは、いま契約しているAIツールを並べて、「先月それで何の作業が消えたか」を1行ずつ書いてみることです。書けないものは、使われていないツールです。止めるか、使う作業を決め直すかの、どちらかになります。
小さく作って定着させる4ステップ

作業が決まったら、次の順番で進めます。弊社が社内の仕組みを作るときも、この順番から外れると止まります。
① まず自分で1回、AIと一緒にやってみる
いきなり自動で回さず、画面を見ながら1回やります。ここで見るのは「速いかどうか」ではなく、「人がやったときと同じものが出てくるか」です。違うものが出てくるなら、手順の説明が足りていません。
② 手順を文章にする
①でうまくいったやり方を、そのまま文章にします。何を見て、どういう順で、どこまでやるか。ここで書いた文章が、そのままAIへの指示書になります。人が読んで分かる文章であれば十分で、専門的な書き方は要りません。
③ 週1回、その手順で3〜4回まわす
同じ作業を、同じ手順で繰り返します。3回か4回もやると、うまくいかない条件が見えてきます。件数が多い月だけ止まる、書式が違うと止まる、といった具合です。見つかったら手順書のほうを直します。
④ 自動で回し、動いているかの確認方法を決める
止まらなくなってから、決まった時刻に自動で動かします。このとき必ず一緒に決めるのが、動いているかどうかをどう確認するか、です。前の見出しに書いたsitemapの件は、ここを決めていなかったために起きています。
定着するかどうかを分けるのは、②で書いた手順書が会社に残っているかどうかです。手順が人の頭の中にあるうちは、その人が休むと止まります。文章にして共有フォルダに置いた時点で、はじめて会社の仕組みになります。
AI導入で残るのは、契約したツールではなく、書き出した手順書のほうです。
なお、①から④までを1つの作業でやり切るのに、弊社の感覚では数週間かかります。1か月で全社を変える計画を立てると、たいてい①で止まります。1つ回してから次に進むほうが、結局は速く進みます。
後藤、貸します。
会社の仕事を、
弊社はAIに何をやらせているか
ここまでの進め方を、弊社が実際にどう回しているかを書きます。
使っているのはClaude Codeです。日本語で頼むと、パソコンの中のファイルを読んだり書いたり、決まった時刻に処理を動かしたりしてくれるAIだと考えてください。弊社ではこれで社内の仕組みを作り、運用しています。私自身は非エンジニアで、コードを書けるわけではありません。
その中で使っているのが、役割ごとに担当を分けた「AI社員」です。サブエージェントと呼ばれる機能で、記事を書く担当、書かれたものを確認する担当、調べる担当、といった形であらかじめ定義しておき、仕事ごとに呼び分けます。
役割を分けているのには理由があります。1つのAIに全部やらせると、書いた本人が自分の文章を確認することになるからです。書く担当と確認する担当を分けると、書いた側が気づかなかった間違いが上がってきます。人の組織で、作った人とは別の人が検品するのと同じ考え方です。
この作り方はAIエージェントの作り方に手順としてまとめてあります。
成果として出ている数字も書いておきます。この運用で書いた記事のうち1本は、「claude aiエージェント 作り方」という検索語でGoogleの平均掲載順位が1.6位です。その記事だけで、3か月に1,529回クリックされました(2026年5月27日〜8月23日・自社のSearch Console実測値)。書く担当と確認する担当を分けたうえで、私が最後に見て公開する、という進め方で出ている数字です。
ここで持ち帰っていただきたいのは、Claude Codeを使ってください、という話ではありません。任せるときは1つに全部やらせず、作る役と確認する役を分ける。これはChatGPTでもGeminiでも同じで、会話を2つに分けるだけでも成立します。1つ目で作らせ、2つ目に「この文章の事実の間違いを指摘して」と渡す。それだけで、出てくるものは変わります。
自社でやるか、外に頼むか
ここまで読んで、「うちには手を動かす人がいない」と思われたかもしれません。その判断材料を書きます。
自社でやったほうがいいのは、次のような作業です。
- 毎日・毎週発生する作業。回数が多いほど、社内に手順が残る価値が大きくなります
- 何を出すかを会社として決める作業。判断そのものは外に出せません
- 現場の人しか知らない例外が多い作業。手順を書けるのは中の人だけです
外に頼んだほうがいいのは、次のような場面です。
- 立ち上げの設計。最初の1回だけ重く、そのあとは軽くなる工程です
- 社内に手が空いている人がいない状態。学ぶ時間そのものが取れない場合、社内でやる案は計画倒れになります
- つなぎ込みの設定など、非エンジニアだけでは詰まりやすい部分
外に出すかどうかは、作業が難しいかどうかではなく、社内に手を動かせる人がいるかどうかで決まります。
費用の見方も書いておきます。月額いくら払うか、だけで比べると判断できません。空いた時間で社長が何をするか、そこまで含めて見るほうが決めやすくなります。AI導入にかかる費用の内訳は中小企業のAI導入、実際いくらかかる?で整理しています。
外に頼むときに確認していただきたいのは2点です。1つは、作って納品して終わりなのか、運用が回り始めるまで見るのか。もう1つは、手順書が自社に残る形になっているか。この2つが抜けると、頼んだ側の会社に何も残らないまま契約だけが続きます。
「まず社内で勉強してから」と考える気持ちはわかります。ただ、本業を回しながら学ぶ時間を取るのは、実際には難しいところです。弊社も非エンジニアのまま、作りながら覚えてきました。動かしながら覚えるほうが、机上で学ぶより早いというのが実感です。
手を動かす人がいない場合
AI導入が止まる原因は、たいていツール選びではありません。決めることは決まっていて、手を動かす人がいない。この状態のまま数か月が過ぎている会社は少なくないと思います。
その受け皿として、弊社では「後藤、貸します。」という月額のサービスをやっています。IGS代表の後藤本人が、会社の実務を月額で引き受けるものです。集客・発信、Web・制作、AI・業務改善、事業・プロジェクト推進、経営・日常実務を、領域で切り分けずに横断して担当します。この記事に書いた「作業を決める、手順を書く、回して定着させる」の部分を、社内の人の代わりに進める形です。
料金は月10万円(税別)・月15時間から。受け入れは毎月10社までで、3か月一括のお申し込みは初月が半額になります。まずは30分の無料相談から、止まっている仕事を教えていただく形にしています。
サービスの詳細と相談フォームはこちらです。
FAQ
Q. 社員が数人の会社でも、AI導入の効果はありますか?
A. 人数よりも、毎回同じ手順で発生する作業があるかどうかで決まります。週1回の定型作業が1つあれば対象になります。人数が少ない会社ほど、社長本人の時間が空くという形で効きます。
Q. 無料のAIから始めても大丈夫ですか?
A. 最初の1作業を試して判断するだけなら、無料のもので十分です。ただし社外の情報や個人情報を入れる可能性がある場合は、入力してよい情報の範囲を先に決めてから触ってください。ここだけは無料か有料かとは別の話になります。
Q. 社内でAIを使う人が増えません。どうすればいいですか?
A. 使う人を増やす前に、使う作業を1つに絞ってください。全員に配って自由に使ってもらう形にすると、使う人と使わない人に分かれたまま止まります。1つの作業で手順書を配り、その作業だけを全員が同じやり方でやる。増やすのはそのあとです。
Q. 一度入れたAIが使われなくなりました。やり直せますか?
A. やり直せます。弊社の場合は、ツールを替えるのではなく作業の選び直しから戻ります。使われなくなった作業を、この記事の3条件(毎回発生する、手順を説明できる、間違えても戻せる)に当てはめ直してみてください。欠けていた条件があれば、そこが止まった箇所です。







